海街の夕陽一年のうち、最も長い一日の季節なのに、この時間からの太陽は、何故か駆け足に落ちて行く。反対側の何処かの国に緊急な用事でもあるのでしょうか、はたまたその灯りを待ち望んでいる人がいるのでしょうか、いずれにしても、誰もがひとつ呼吸をする程の僅かな時間に、見事にその姿を消してしまう。そして残されたオレンジ色の静寂のステージ。そして少し経つと、子供達のはしゃいでいる声と、ビーチサンダルであろうパタパタ走る音が海街に響いた後にお母さんであろう「暗くならないうちに早く帰って来なさい」という大きな声がするも、全く無視して家と反対方向に向かうパタパタ音。あの頃の自分もそうだったなあって目を細めて遠くを見ていると、おやおや何処からかカレーのにおいが漂い出してきた。お腹がぐーとなる。堪らず家に帰ろうとバイクに跨ると、さっきのパタパタ音が海から戻って来るぞ。そして弾むような子供の声で「ただいまぁ、やったあ!今日カレーだっ!」母は強し!