日本海縦貫レッドサンダーは北へ走る。夏のこんな穏やかな海沿いの街でも、地吹雪吹き荒れる冬の田んぼの真ん中も、力強く、日本海太鼓の鼓動のように地面に同じリズムを叩き込む。この海沿いの街に住む少年の夢は貨物列車の運転士。毎晩、遅い時間に走るこのレッドサンダーの鼓動が子守唄、タタタタタタタタタタンタタンタタンタタンタタンタタンタタンその一定のリズムが8小節を過ぎる頃、かれはもう運転台に座っている。信号機ヨシ!速度ヨシ!ゆっくりだが、力強く、同じリズムを刻んで、彼の操るレッドサンダーは、北へ北へと進んでいく。1時間も走ると彼の睡眠のスイッチが切り替わり、そこからなんと上昇を始める「そうだ今夜は、満月だから月経由で土星まで荷物を届ける日だったんだ!さあ、サンダー、もうひと頑張り頼むゾ!」目の前が急に明るくなる、東京とまではいかないけれども、そこそこのビル群がネオンと共に現れる。月の貨物ターミナル駅だ、ここはゆっくり弧を描いて曲がりながら高度を落として、停車させなければいけない。少年はいつもここでしくじる。月をぐるぐる何周も周り、止まらない中、太陽のネオンより遥かに明るい光が、運転台の正面から、少年に直撃する「あああスピードが落ちないっスクランブルスクランブル!月管制塔!応答してくださいっ!」ターミナル中の緊急ベルが、四方八方から彼に降りかかる、ああどうしよう止まらない!、、「ひろし!いつまで寝ているの、目覚ましが鳴りっぱなしでしょ!」その声に驚いて目を開けると窓からの太陽の日差しを遮る物体が「あっ母さん、どうして月に⁇」「何寝ぼけてるの早くご飯食べなさい、学校遅れるわよ!」「うん😢」こうしてまた少年の夢の銀河鉄道は、月到着を達成出来ずに、はかなく終わる。。少年は今だかつて月から先の宇宙を見たことがない。学校の前の踏切でローカル電車がタタンタタンタタンと駆け抜けていく。