岐阜県中津川市と長野県下伊那郡阿智村との境界上の山。美濃の最高峰である。中央アルプスの最南端にあって、山容が船を伏せたような形をしているところから船伏山(ふなふせやま)ともいい、古くは伊勢湾を航行する船の目標となっていた。山名は『吉蘇志略』によると「天照大神がここで降誕され、その胞衣(えな)がこの山に埋められた」とするところからきたのものとされている。なお、この山の北側の肩を通る神坂(みさか)峠は、すでに記紀の時代から開けており、日本武尊もここを越えたとされているほど古い峠である。登山道は、中津川市から中津川を遡って黒井沢の出合まで車道が通じている。黒井沢林道は初めは谷の左岸を走っているが、途中から右岸に移り、やがてこの右岸の山腹を巻くようになる。源流部で谷を渡ってから急登して野熊ノ池に出る。この付近は小草原状をなして休憩をとるにはいい場所である。この後、カラマツ林の中をジグザグを繰り返して登っていくが、1987mまで上がると展望が開けてくる。伊那谷を挟んで南アルプスの大障壁、そして南西には伊勢湾が白く光っている。やがて本峰南西のトウヒ林の中を右に巻くように進んで登頂。